子どもに関する問題 -離婚相談ガイド-

離婚時における子どもに関する問題として、
1.子どもの親権者・監護権者の指定
2.子どもの養育費
3.子どもとの面会交流
が主に挙げられます。

以下では、それぞれの問題についてご説明します。
子どもの親権者・監護権者の指定・変更

■親権者

1.はじめに
親権者とは、未成年の子どもを監護・養育し、子どもの法定代理人として法律行為をなす権利・義務を有し、子どもの財産を管理する権利・義務を有する者を言います。
親権者は、未成年の子どもの監護養育権や財産管理権といった法的権利を行使する者として重要な地位です。そして、親権は夫婦が共同して行使することを原則としますが、夫婦が離婚する場合に、共同して親権を行使することは期待できません。そのため、夫婦が離婚する場合には、必ず夫婦の一方を親権者として指定する必要があります。このとき、夫婦の話合いによって親権者を決定することができない場合には、協議離婚の届出ができません。役所では、親権者の指定がない離婚届はそもそも形式的要件を満たさないものとして扱われるからです。そのため、離婚調停及び離婚訴訟の中で争うほかは、親権者指定調停における調停合意又は親権者指定審判における審判によって指定することになります。

2.親権者の適格
親権者を話合いで決めることができない場合(調停不成立等を含む。)には、親権者指定審判における審判又は離婚訴訟中判決として裁判所が指定することになります。
このときに裁判所が判断するのは、どちらの親が親権者として適格を有するかという視点です。そして、適格性は子の福祉の観点から評価されます。たとえば、以下の点が考慮要素となります。
 ①子どものこれまでの養育状況と今後の養育方針・養育環境等
 ②親の経済的・身体的状況等の比較
 ③子どもの意思(特に15歳以上の子どもは陳述聴取が必須となります。)
従来は、母性優先という考え方がありましたが、女性の社会進出に伴ない、乳幼児を除き、必ずしも母親が有利とはいえない状況となっております。むしろ、子どもの現在の養育状況に特段の問題がない場合には、それにもかかわらず現在の監護者でない親を親権者とすべき事情があるか否かをもって判断される傾向にあります。

3.親権者の変更等
離婚後は、一方の親のみが親権者となります。そして、親権者は事後に両親の合意によって変更することはできず、裁判所による審判手続を経て変更する必要があります。
親権者変更の審判中に、現親権者による不適切な親権行使を阻止する手段としては、親権喪失の審判制度や親権停止の審判制度があります。

■監護権者

1.はじめに
監護権者とは、子どもを監護養育する権利を有する者を言います。親権には必然的に監護権を含むため、親権者が同時に監護権者となるのが原則です。もっとも、親権者が海外出張等により子どもの監護養育を行なうことが困難となった場合に、他の者を監護権者とするときがあり、この限りで親権者と監護権者が別々となり得ます。
また、夫婦が離婚する前に、子どもの監護権者を決め、あるいは子どもの引渡しを求めるために、監護権者指定の審判及び子の引渡しの審判を求めることがあります。

2.監護権者の指定
監護権者は必ずしも両親の一方だけではなく、両親の父母(子どもの祖父母)が監護権者として指定される場合もあります。
監護権者は夫婦間の話合いによって決定することが可能ですが、それ以外の場合には、審判又は離婚訴訟中の付帯請求に対する判決として裁判所が決定することになります。その際には、子の利益が最重視されます。
養育費

■養育費とは

養育費とは、子どもを監護するために必要な費用(民法766条1項前段)を言います。夫婦が離婚し、一方の親が子どもの親権・監護権を取得した場合であっても、他方の親が子どもにかかる養育費の支払を免れるものではありません。そのため、一方の親(権利者)から他方の親(義務者)に対して養育費の支払を求めることができます。
養育費には、①養育費の算定に関する問題と②養育費の支払期間(終期)に関する問題があります。①の算定に関する問題に対しては、現在ではいわゆる「算定表」を用いて、夫婦双方の基礎収入と子どもの人数・年齢等を考慮して、大まかな養育費を算定し、そこから個別具体の事情を考慮して養育費の額を決めるのが実務の傾向となっています。次に、②支払終期に関する問題ですが、成年に達した子どもは自活すべきとして、対象となる子どもが20歳に満つる日の属する月までとすることが多いですが、両親の学歴等に応じて、異なる終期で合意することもあります。

■養育費請求調停・審判

親同士の間で養育費の額等に関する話し合いがまとまらない場合には、権利者である親は、家庭裁判所に対し、義務者たる親に対する養育費請求のための調停を申し立てることができます。
調停では、申立人と相手方の双方がお互いの収入認定に関する資料(源泉徴収票・課税証明書等)を提出し、双方の収入を基礎として、具体的な養育費の金額が話し合われます。一方が無職・無収入の場合であっても、就労が可能なときには、潜在的な就労能力があるものとして、賃金センサスに基づく平均収入を基礎として計算ことがあります。
調停で合意できれば、調停調書に合意内容がまとめられます。これに対し、調停が不成立となった場合には、ほとんどの場合には自動的に審判移行し、家事審判官たる裁判官が一切の事情を考慮して養育費の額等について審判します。
審判結果について不服がある場合には、不服のある者は、審判の告知を受けた日から2週間以内の不変期間内(裁判所による伸長が認められません。)に即時抗告を申し立てることができます。

■養育費増減額調停・審判

養育費の額等についていったん合意が成立した場合であっても、事後に扶養家族が増えた、収入が減少した等の事情により養育費の金額等が不相当となったときには、一方の親は他方の親に対し、養育費の増減額を求めることができます。
しかし、親同士の間で養育費の増減額に関する話し合いがまとまらなかった場合には、増減額を求める親は、家庭裁判所に対し、他方の親に対する養育費増減額請求のための調停を申し立てることができます。
調停では、従前の養育費の金額等について、これを不相当とするだけの事情変更が認められるか、これまでの養育費の支払に遅滞がないか等の事情を考慮し、具体的な養育費の金額について話し合うことになります。
養育費増減額の認容審判・却下審判に対しては、即時抗告を申し立てることができます。

■養育費支払の履行確保

養育費の支払が滞った場合には、その後の養育費支払の履行確保手段が問題となります。

1.履行勧告
養育費の支払に関する調停が成立している場合には、権利者たる親は、家庭裁判所に対し、義務者に対して調停内容に基づく養育費の支払を履行するように勧告することを申し出ることができます。この申出は、口頭か書面かを問わず、電話による申出も可能ですし、費用も掛かりません。しかし、義務者に対する強制力はありません。

2.強制執行
権利者は、義務者が養育費の支払を履行しない場合に、地方裁判所に対し、養育費支払の履行確保を目的として強制執行を申し立てることができます。多くの場合は、義務者の預貯金や給与債権・退職金債権を差し押さえることになります。
  養育費を月払いにしている場合等には、当該養育費は扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例が適用され、将来分についても差し押さえることが可能です。また、その養育費債権を債務名義として、給料債権・退職金債権を差し押さえる場合には、その給付から所得税・住民税等を控除した額の2分の1まで差し押さえることが可能です。
面会交流

■面会交流とは

面会交流とは、子どもを監護養育していない親が、子どもと面会することを言います。
子どもと面会交流することは、親として当然に有する権利と考えられています。そのため、親権者・監護権者において、非監護者と子どもの面会交流を拒否することは原則できません。しかし、子どもが面会を拒否している、子どもに会わせることで精神不安を招くなどの悪影響がある場合,子どもや監護権者に対して暴力を振るうおそれのある場合等には、面会交流の方法や面会交流それ自体が制限されることがあります。

■面会交流に関する調停・審判

夫婦間で子どもとの面会交流に関する取決めができない場合には、非監護親は家庭裁判所に対し、面会交流の調停を申し立てることができます。面会交流調停の申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。
面会交流調停では、子どもの年齢や精神状態・生活状況等を勘案して、面会交流の具体的方法(回数、時間帯、交流場所、子どもの引渡し方法等)を取り決めていきます。子どもが10歳を過ぎて物事に対する理解力をある程度備えているときには、子どもの意思が尊重されます。
面会交流調停によっては合意に至らなかった場合には、自動的に審判に移行し、家事審判官たる裁判官が一切の事情を考慮して面会交流の是非のほか、具体的方法等について審判を行ないます。

■試行的面会交流

試行的面会交流とは、面会交流に関する調停合意や審判に先立ち、非監護親と子どもとの交流場面を設定し、その交流時における親子間の交流の様子、子どもへの影響等を勘案して面会交流の是非及び適切な面会方法等の模索等を行なう手続です。
ここでいう試行的面会交流は、調停委員会や裁判官において面会交流の是非等を判断するための材料とするために行なうものですので、期日の設定や具体的な方法は調停委員会/裁判所又は担当調査官と調整して決めることになります。

■面会交流の履行確保

調停等により面会交流の回数・方法等が決まったとしても、合意内容に反して面会交流が実現されないときがあります。この場合において、履行を求める手段としては2つあります。

1.履行勧告
権利者が、家庭裁判所に対し、義務者に面会交流に関する合意内容を履行するよう勧告を求める制度です。申出の方法に制限はなく、口頭、書面による申出や、電話による申出も可能です。また、申立ての費用も掛かりません。
申出を受けた家庭裁判所は、面会交流義務の履行状況を確認し、義務者に対して面会交流の履行勧告を行ないます。
しかし、履行勧告は簡便である反面、義務者に対する法的な拘束力はありません。

2.間接強制
間接強制とは、裁判所が義務者に対し、義務内容を履行するよう命令し、これに応じなかった場合に金銭の支払を命じることとして、義務履行をはかる制度です。
子どもにも人身の自由がありますので、面会交流のために子どもを強制的に連れて来て面会交流させる直接強制は認められません。そのため、間接強制という手段を採ることになります。

■面会交流の一時停止・取消し

非監護親と子どもの面会交流に関する合意が定まった場合でも、その後に子どもへの悪影響が及んでいるときや、面会交流の権限を濫用した要求がなされたとき等には、親権者・監護権者は家庭裁判所に対し、面会交流権の一時停止や取消しの申立てをすることができます。