【家族の身上監護と財産管理~後見制度~】

2016.10.12
相模原・相模大野の『法律事務所ろはす』、弁護士池田達彦です。

・家族が認知症を患い、本人では介護保険契約を結べない
・相続のひとりが精神障害を患い、遺産分割協議が進まない
・近所の人は一人暮らしだが、身なりが日々崩れていて心配だ

などのお悩みを抱える方に、ここで少し後見制度についてお話しします。

後見制度は、平たく言うと、ご自身で物事を決める判断力に不安がある方に対し、これを支援する者を付ける制度です。以下では、最高裁判所事務総局家庭局が公表している『成年後見関係事件の概況ー平成27年1月~12月ー』のデータを参考にお話しします。 http://www.courts.go.jp/vcms_…/20160427koukengaikyou_h27.pdf

後見制度は、その支援の程度に応じて後見、保佐、そして補助に分かれており、平成27年12月末時点における後見制度全体の利用者は約19万人に及びます。近年では、高齢化に伴い、毎年1万人程度の割合で利用者が増えている状況です。以下では、後見に焦点を当ててお話しします。

そもそも、なぜ後見制度が必要なのか?
たとえば父親は認知症が悪化し、自宅介護が難しいので、自宅物件を売却して介護保険契約を結びたいが、父親自身では自宅を売ることもできないし、介護保険契約もできない場合に、子どもが代わりに売却しようにも、父親の判断能力が不十分であれば、父親は子どもに代理権を与えることもできないため、自宅物件は売却できないままとなってしまいます。このような事態を回避するために、後見制度は設けられています。

成年後見制度の主な申立理由は、約7割が預貯金の管理、不動産の処分、相続などといった財産管理に関する理由で、約3割が施設入所等のための介護保険契約の締結等の身上監護に関する理由です。

後見制度には、大きく分けて、ご自身で後見人を選ぶ任意後見と裁判所が後見人等を選ぶ法定後見があります。現状のほとんどは法定後見が利用されていますので、以下では法定後見を前提にお話しします。

法定後見の申立ては、後見人の選任が必要となるご本人のお住まいの地域を管轄する家庭裁判所に対して行います。
申立費用は、申立手数料、登記費用、郵便切手代を合わせると7,000円~8,000円となります。このほかに、医師に作成してもらう診断書料と、精神鑑定が必要な場合には5~10万円の費用が必要になります。なお、相模原市を含め、各市町村では、成年後見制度利用支援事業を行っていて、ご本人の経済的事情により申立ての費用を工面したり、後見人等の報酬を支払えない場合に、市区町村がこれらの費用を助成する制度を設けています。

法定後見の申立ては誰ができるのかというと、ご本人のほかに、配偶者及び4親等以内(両親、子ども、兄弟姉妹、従兄弟・従姉妹等)の親族や、市区町村長等になります。
平成27年における割合では、子や兄弟姉妹等による申立てが約57%、本人・配偶者による申立てが約17%、市区町村長による申立ても約17%となります(これらには弁護士等による代理申立ても含まれます。)。
ここで、肝心なのは、市区町村長による申立ても約17%あるということです。冒頭のケースで、単身で親族との交流が無い方において、ご本人で申立てができないときに、市区町村長による申立てが利用されます。もっとも、市区町村長も全てのケースを把握しているわけではないので、ご近所の方には気にかけていただき、お近くの高齢者支援センター職員等にお声かけいただくことになります。

法定後見の申立てがなされると、概ね75%は2か月以内に判断が下されます。もっとも、親族間対立があって、各親族の意見聴取が困難な場合や、ご本人の囲い込みなどがある場合など、判断が下されるまでに相当期間かかるときもあります。

後見人には、親族の方が選任される親族後見人と、私たち弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家が選任される専門職後見人とがありますが、現在では、専門職後見人の割合が大きくなっています。

高齢化社会に伴い、後見制度利用の必要性は増すばかりです。一方で、私も先日10月8日(土)にウェルネスさがみはらで実施された成年後見制度市民公開講座の相談担当者として出席しましたが、まだ十分に周知されていない状況にあると実感しました。

成年後見制度については、私たち弁護士や、地域の高齢者支援センター等で詳細な説明をお聴きいただくことが可能ですので、まだ漠然としか分からないので詳細を知りたい、申立書類の準備や作成方法を知りたい、といったご希望のある方ははぜひ我々にご相談ください。

※横浜家庭裁判所管内では、後見開始等の審判申立てに必要となる書式が随時変更されています。横浜地方/家庭裁判所のHPで更新されていますので、適宜確認するようにしてください。